No.6 2つの主要営業スタイル

各業種・業態で顧客情報や扱う製品、営業の方法は異なりますが、共通の営業スタイルはあるのでしょうか?

大きく分けると「案件営業スタイル」と「ルート営業スタイル」に分かれます。

「案件営業スタイル」は生産材など比較的高価格商品の場合に、「ルート営業スタイル」は消費材など低価格商品の場合に多く使用されています。
私がご支援した100数十社では、案件営業スタイルが6割、ルート営業スタイルが4割の比率です。

「案件営業スタイル」の特長

業種的には製造業、建設業、商社、金融業、サービス業などで多く使用されています。
製品としては、産業用機器、電子部品、医療機器、住宅、空調機器、OAシステム、金融商品等々です。

【案件営業スタイルの取り組み方針】

■有望な案件を見極め、1つずつ着実にクロージングしていく営業革新

  • 商品説明だけではなく、お客様ごとのニーズを確認し、その背景にある課題を解決するためのソリューション営業が求められます。
  • 物があふれている時代、お客様の満足度を如何に高めるかがポイントです。

■組織的な提案営業を基点とした営業の情報化
具体的には

① お客様の真の依頼・期待・要望・苦言を見極める(顧客を知る)
② お客様を知った上で、お客様が期待するより一段高いレベルの活動を実施する
③ さらに案件に広がりを持たせ、継続的な受注を得られるようにする
④ 個々の営業担当の裁量に依存するのではなく、チームとして案件を成約する体制を作る

【案件営業スタイルのポイント】

■見極める

  • 真剣に導入を検討されているお客様への対応を優先します。
  • (例)予算化されているか、承認プロセスや決定権者が明確か、導入スケジュールが決まっているかなどを参考にします。

  • まだ半年以内に決定する案件でなければ、一般的な販促活動でフォローするなど、これらの整理・管理ができる仕組みを作ります。

■商談ステップを明確に

  • アポイントからクロージングまでの明確な商談シナリオを作ります。
  • シナリオを踏まえながら、日々の商談において明確な目的をもって活動することが大切です。

■次の営業に活かすための仕組み

  • 受注要因や受注にいたった一連の商談プロセスにより案件の要因分析をできるようにします。
  • 特に失注案件については、失注要因とどうすれば受注できたか、一連の商談プロセスの見える化が大切です。競合のいない案件はほとんどなく、失注はありますが、その要因分析ができると次の案件対策や製品開発に大いに役立ちます。失注の本当の要因を見極めている営業担当を評価する組織が成長しています。

■競合対策

  • 実際、どことどれだけ競合しているかを見える化し、比較されるポイントは何か、価格、品質、性能、納期などを整理します。
  • 競合会社へのお客様のイメージはどうか。信頼度やファン度を見極め、競合会社の戦略などを収集し対応します。

■多角的な売上予測分析

  • 受注の可能性、商談ステップ、最終コンタクト日、経過日数、競合情報など複数の要因を総合的に勘案して対応していきます。
  • 予測に基づきいち早い対応を実現するには、軌道修正と次の一手のタイムリーな対応が必要です。

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「ルート営業スタイル」の特長

業種的には食品メーカー、日用品メーカー、医薬品メーカー、部品メーカー、卸売業などで多く使用されています。
製品としては、食料品、飲料品、酒類、日用品、包装用品、検査薬、電子部品等々です。

【ルート営業スタイルの取り組み方針】

■固定客に特化して収益最大化を目指す営業革新

  • 市場の成長率が望めない現代、いかにして市場シェアを獲得するか、そのためには活動の効率化が必要です。
  • 自社で購入してもらう割合を最大化にするための、情報活用がポイントです。

■既存顧客の維持、深耕を基点とした営業の情報化
具体的には

① お客様の真の依頼・期待・要望・苦言を見極める(顧客を知る)
② お客様を知った上で、お客様を起点にした戦略的行動、計画立案を行う
③ 御用聞き営業から、明確な目的を持った営業へ変わり、お客様から求められる営業になる
④ 個人ではなく、組織としてお客様対応ができるように変える

【ルート営業スタイルのポイント】

■顧客セグメンテーション

  • 潜在購買力と自社のシェアにより「重点顧客」「拡大顧客」「維持顧客」「成行顧客」に分け、訪問回数を設定します。
  • 無制限に時間があればすべてのお客様が大切な取引先ですが、限られた時間でフォローするに当たり顧客セグメンテーション(区分)を明確にし、必要な活動の実施を目指します。

■アクションプラン

  • お客様自身の営業戦略、当社の営業方針、競合情報、在庫の考え方などから個別に営業戦略を検討します。
  • その営業戦略をもとに具体的な活動予定をプランニングします。

■日次・週次のコミュニケーション

  • 営業現場におけるタイムリーな対応は差別化の原点です。
  • 競合対策、流通戦略、商品戦略、価格戦略、販促戦略など、スピード感を持ってお客様対応を実施します。

■営業ナレッジの活用

  • 日々の活動の中で、効果的な情報(高値、高騰、割安感、特売など)をナレッジ(知識)化し、全営業がタイムリーに商談で活用できるよう体制化します。

■人材育成

  • 管理者は部下と共に予算達成に向け、高い意識を持って行動することが必要です。
  • 日々の活動や重要顧客への対応について、管理者が適切に指示・指導をコメントし、組織の活動指針の見える化を実現することが大切です。

実際の営業活動では『案件営業スタイル』にルートの要素が加わったり、『ルート営業スタイル』に案件の要素を取り入れたりと、2つの営業スタイルをミックスするケースが多いのですが、どちらも顧客起点を盛り込んだ組織が成長しています。