案件営業スタイルの組織ではどのようにして予算と戦略テーマを決めているのでしょうか?
案件営業スタイルでは期の後半に来期の「予算」と「事業計画」を策定します。前期の実績と今期の見通し、市場動向、製品戦略、競合情報などと中期経営計画を照らしあわせて作成します。
各事業部門の予算と事業計画の集計が全社の予算と事業計画となります。
■1.予算
来期の予算は、受注高、売上高、期末受注残を主要製品ごとに、上期、下期、年間合計で作成します。上期と下期の比率は、前期や今期の実績等と比較し、大きく乖離しないようにします。
年度合計については、前年と比較し増加額や増加率を明記します。
この予算表を作成するにあたり、現在の受注残(今期受注済で来期納品案件分)、来期受注予定の案件(受注見通し:パイプライン案件×確度)、受注率(今期受注額を今期の案件総額で割った比率)を整理することが大切です。
■2.上期予算分類(サンプル金額、Mは百万円、Kは千円)
例えば、①上期受注予算が250百万円に対し、②受注残は26百万円、③受注見通しが71百万円だとすると、④ギャップは153百万円となります。④ギャップについては、現状まだ案件が発生していないので、来期に案件化して受注するべき金額となります。
④ギャップをクリアするためには、⑤受注率の平均が40%だとすると⑥ギャップ案件総量は383百万円が必要となります。
新規に383百万円の案件が発生すると、受注率40%で新たに153百万円の受注ができ、受注見通しが予定通りなら、上期の250百万円の予算を達成することができるのです。
■3.事業計画の数字
⑥ギャップ案件総量を確保するための施策が、事業計画となります。どのような施策で必要な案件総量を達成するか、今期の反省と市場動向、製品戦略、競合状況などを見極めて事業計画を作成します。
例えば、「既存顧客」と「新規開拓」で分けてみて、それぞれの比率から④ギャップを振り分けます。
ここでは「既存顧客」の④ギャップを97.2百万円、「新規開拓」を55百万円とします。
「既存顧客」への施策をさらに「既存拡大」と「横展開」と分け、「既存拡大」の比率が74%で平均受注単価が3百万円とすると④ギャップは24件で72.2百万円となり、受注率が50%とすると必要な⑥ギャップ案件総量は48件144.4百万円となります。
「横展開」の平均受注単価が5百万円とすると④ギャップは5件で25百万円となり、受注率が33%とすると必要な⑥ギャップ案件総量は15件75百万円となります。
同様に「新規開拓」への施策を「セミナー」と「イベント」とすると、各々の受注単価と受注率から「セミナー」と「イベント」で必要な④ギャップと⑥ギャップ案件総量の件数と金額が計算されます。
このように案件営業スタイルでの予算化については、上期に必要な④ギャップを計算し、そのギャップをクリアするのに必要な⑥ギャップ案件総量を算出します。
そうしてこの⑥ギャップ案件総量を実現するための施策ごとに予算を分解していきます。
ここで大切なことは、案件ごとの受注予定日、受注予定金額、受注確度をしっかり確認し、生きた案件を集計することです。
組織によっては受注予定日がすでに過ぎているものや、中止、失注が確認されず不明確な案件が多く、何となく沢山案件があるように感じているところが多く見受けられます。
※Mは百万円、Kは千円です。
■4.戦略テーマ(事業計画)【P】
次に⑥ギャップ案件総量を確保するための戦略(事業計画)を策定します。
具体的には個々の施策を戦略テーマとして、ターゲット、時期、実施要領、案件総量を明記していきます。
例えば、「新規開拓」の「セミナー」施策に対する戦略テーマは下記のようになります。
戦略テーマの詳細として、「戦略テーマ名」は「2015年上期新規セミナー施策」、「戦略分類」は「2.新規顧客開拓」、「開始日」は「2015/04/01」、「終了日」は「2015/09/30」と指定します。
ターゲット情報としては、
「市場の確認」⇒ 本戦略テーマの市場動向とニーズを具体的に記入します。
「顧客ターゲット」⇒ 具体的な顧客として既存顧客リストの中でどの層が本戦略テーマの対象となるか。また、協業先や新規媒体でどれだけニーズのある見込み顧客にコンタクトできるかを記入します。
「実施要領」⇒ 具体的なセミナー日程、セミナー内容、対象地域、集客目標を実施回数分入力します。
計画としては、本戦略テーマで目標とする「案件目標数」「案件目標金額」「受注目標数」「受注目標金額」を明記します。
また、必要に応じて開催に必要な費用と粗利額などを管理していきます。
戦略テーマ(事業計画)【P】については、予算を達成するための施策を現場の状況や市場動向を見極めながら、どれだけ具体的に策定できるかがポイントとなります。
戦略テーマ(事業計画)【P】が策定できたら、実際の活動において事業計画がどのように遂行されているかの見える化を行い、その傾向を毎月分析し、いち早く事業計画の深掘りや見直しを実施していくことが大切です。