No.11 競合対策と失注分析【C】

案件営業スタイルの組織では、どのようにして競合対策と失注分析を行っているのでしょうか?

案件営業スタイルでは、どの業種・業態をみても競合のない案件が少なくなっており、競合対策と失注分析がとても大切になっています。まずは「主な競合情報」を選択式で選べるようにし、ある程度以上の金額の案件には、必須項目として選択するようにします。そうすることで、件数ベースと金額ベースでどことどの位競合しているかがわかるようになります。

クロージングの途中では、「競合状況」として「1.当社が優位、2.五分五分、3.競合が優位、4.3社以上の競合」を選択します。この時もBANT(予算/決裁権/必要性/導入時期)の内容をしっかりみて判断するようにします。そのうえで、競合状況別のレポートを作成し、競合が強い案件に対する対応を取るようにします。(対応方法については後述します)

フェーズが「受注」「失注」になった時点で、「勝因・敗因」「勝因・敗因理由」を選択し「競合メモ」を入力するようにします。

「勝因・敗因」では、「1.価格、2.権限者、3.提案、4.商品、5.時期」を選択し、「4.商品」の「敗因理由」しては「7.機能が足りず」や「8.性能が足りず」などより掘り下げた要因を選択できるようにします。このことでクロージングの際に参考にした案件に対するBANT情報の、どの部分が「勝因・敗因」につながったかがわかるようになります。

また、失注案件については、「競合メモ」を入力するようにします。失注要因については、なかなか本音で報告せずあいまいにしがちな営業担当が多いのですが、現状、業績を達成したり成長している企業は、この失注要因をしっかり把握し次の対策に生かしている組織です。
価格で負けた場合、競合がいくらだったのか、また、いくらであったら受注できたのか。提案で負けた場合は、どのような提案であれば受注できたのかなどを深堀り、入力していきます。
これらの組織では、案件の失注要因がわかれば組織としての競合対策につながるため、本音の失注要因を報告している担当営業を高く評価しています。

競合情報は簡単には聞けないことが多いのですが、真摯にお客様の課題を解決するための提案を実施することで、教えていただける場合があります。まずは、競合情報を聞くという努力が大切です。そうすると、結果がでた直後には聞けなくても、後日フォロー時に教えていただけたりします。ここで本音の失注要因が把握できることは大きな営業スキルとなります。

◆競合対策
1.競合別_勝敗分析
・主な競合を縦軸に、パーセンテージを横軸にし、「受注」と「失注」の比率を見ます。
・XX社には8割方負けているが、ZZ社には6割方勝っているなど、競合別の比率を確認することができます。

2.競合別_敗因分析
・失注した案件について、競合別の敗因比率を見ます。
・XX社には6割方価格で負けており、YY社には7割近く商品力で負けているなどの敗因を確認できます。

3.商品別_敗因分析
・商品分類を縦軸に、件数を横軸にし、敗因で分けてグラフ化します。
・ネットワーク関連はほぼ価格で負けていて、ERP関連は機能で負けているなどの敗因がわかります。

4.商品別_競合別敗因分析
・商品分類を縦軸に、金額を横軸にとり、主な競合の比率を見ます。
・ネットワーク案件はXX社に大きく負けていて、ERP案件はYY社に負けているなどの敗因が見えてきます。

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例えば、ネットワーク案件ではXX社に価格で100%負けている場合、何もしないと今後の案件も全部負けることになります。社内で可能な対策を講じることで、10%、20%と一部ずつ受注に変える努力も必要です。

◆失注分析
5.失注分析レポート
・案件ごとのBANT(予算/決裁権/必要性/導入時期)情報を切り口に失注分析を行うことで、要因はどこにあり、どのような改善案があるかをレポートで確認します。
・敗因時の競合メモが本音で記載されると、次回、同様の競合先や商品分類で競合した時の対策に繋がります。

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機能や性能、価格だけではなく、大きな影響があるのが権限者です。
企業の系列を優先したり、どこからの話かで承認フローが変わります。

担当者が検討して上司に上げていくパターンと、経営者が興味を持ち、現場に検討させるパターンでは、おのずと承認のフローや決済の仕方が変わります。

意外に事務の女性の意見が決定を左右する場合もあります。よく聞いてみると、日々使用しているものへの慣れがあったり、競合のフォロー体制が充実していたりすることもあります。
特に「改善」「改革」を目指す仕組みの場合、経営に対するメリットだけではなく、現場へのきめ細かいフォローが必要となります。担当者が上申するための課題を聞き、その支援を実施することが大切です。

失注要因は多肢にわたりますが、自社製品や仕組みを拡販するにあたり、どのようなパターンがあるかを整理し、日々の営業活動に生かすことが案件営業スタイルでは重要です。

競合対策をしっかり行い、勝因は自社の強みとして生かし、敗因は商品開発や営業活動に活用できている組織が、業績達成という目標に近づいています。